関係代名詞を避ける

「事実」と「感想」を分けるのページでも述べた、1つの文に1つの情報という "Plain English" の鉄則からすると、関係代名詞もなるべく使いません

日本語は1つの文に何でもかんでも説明語句を詰め込んでもおかしくない言葉ですが、簡潔な英語という観点からは、その日本語に対応させた関係代名詞を用いて、文をいたずらに長くしてほしくないのです。

母語としての英語としての英語においても、文章作法を多少なりとも勉強した者ならば、関係代名詞は使わないで文を書くはずです(だだし、文学作品は別です。これはあくまでも、情報伝達の文においてです)。

関係代名詞を用いれば文は永久に伸ばすことができます。次から次へと情報の付け足しができるからです。しかし、文章作法でまず言われることは「簡潔な文体は簡潔な思考から生まれる」、つまり "clear sentence" は "clear thinking" からということです。

きちんと文の書き方を学んだ者は、ジャーナリストであれテクニカルライターであれ、まず実際の文を書き出す前に頭の中で情報の整理をします。つまり、後から情報をだらだら付け足す必要がないのです。

わかりやすい簡潔な英語を使うためには、最初に文章の内容を考え、関係代名詞をなるべく使わないようにしましょう

Plain English21

例題自分個人的価値観に自信のある人が、成功や幸福を呼び寄せるようである。
×People who have confidence in their personal worth seem to be magnets for success and happiness.

例文を見てみましょう。

まず、「自分の価値観」という意味で使われた "personal worth" を見てみましょう。これでも間違いではありませんが、"personal" は不要です。"their worth" で十分です。「自分の価値を知っている」ということを、  
He knows his worth.  

と言ったりします。

ただし、この場合は「自分自身に自信がある」ということを言いたいわけですから、"have confidence in oneself" となります。

英語感覚で見てみましょう。

また、"magnet" というのは "attraction"(何かを引きつけるもの)と同じ意味です。ここでは "success" や "happiness" と一緒に使うのは不思議な感じがします。

たとえば、「あのレストランは若い人が集まる」というのを英語で言いたい時に、  
That restaurant is magnet for young people.  

というように使います。"success" や "happiness" というのは、そのまま来るものではなく、自分で勝ち取るものです。ですから、この場合に "magnet" を使うのは適切ではないのです。

日本語のアイディアを表現しましょう。

関係代名詞はなるべく使わないで、わかりやすい簡潔な英語を使う例をあげます。  
people who have confidence in themselves は、
people with confidence in themselves  

と言い換えられるわけです。

それから、日本語の「〜のようである」を英訳する時に、"seem" を使うのはやめましょう。

以上のことをふまえて日本文を英語のロジックで考えてみると、「自分に自信がある人は」それ以外の人よりも「成功や幸福により近い位置にいる」ということになり、このアイディアを英語で言えばよいわけです。

例題自分個人的価値観に自信のある人が、成功や幸福を呼び寄せるようである。
Plain EnglishPeople with confidence in themselves are closet to success and happiness.

Plain English22

例題毎年4千万人近い人たちが訪れる古都京都は、日本人の心のふるさとだ。
×Kyoto, the ancient city which is visited by close to 40 million people every year, is the spiritual home of the Japanese people.

英語感覚で見てみましょう。

"spiritual home" ですが、これは英語では特別な意味があります。"one's spiritual home" で、「実際今いる場面」とは違って「自分が一番幸せになれるところ」、あるいは、実際の祖国ではないけれど「精神的、心情的に自分が最も近いと感じる故郷」のことを指します。

日本語のアイディアを表現しましょう。

この場合、「京都」という場所を指して「4千万人近い人が訪れる」と言っているので、京都が多くの日本人にとって親密な場所である、ということを言いたいわけですね。

この「日本人の心のふるさと」というニュアンスは、"dear to 〜" で表現できます。"Kyoto is an ancient city, dear to the heart of every Japanese." とすれば日本文の言いたいことがよく伝わります。

そして、その後に「毎年〜訪れる」という情報を、別の文章として付け加えればいいのです。

例題毎年4千万人近い人たちが訪れる古都京都は、日本人の心のふるさとだ。
Plain EnglishKyoto is an ancient city, dear to the heart of every Japanese. Some 40 million people visit the city every year.

 次に進む


このページはケリー伊藤著「使える英語へ」(研究社出版、1995年)から抜粋したものです。

(C)Copyright 1998-2000 Plain English in CyberSpace,Inc.All rights reserved.