余計な語は使わない

"Plain English" を使えるようになるためには、単語のもつ意味の範囲をきちんと捉え、言う必要のない余計な語は極力省くようにしましょう。例えば、  
日本語の「一般大衆」という表現を、まるで一対一の対応であるかのように "general public" と言う人がたくさんいます。しかし、"general" でない "public" などないわけですから、"general" は余計な語なのです。
また、「相互協力」を "mutual cooperation" と書く人がいますが、"cooperation" には "mutual" の意味あいが入っているので、"mutual" は必要ないのです。  
逆の場合もあります。  
日本語の「お湯」という言葉は、それだけで「熱い水」を意味します。しかし、英語にはこれを表す語はなく、"hot water" と言うしかありません。
さらに逆に、「水」という日本語の単語を英語で表現する場合、"cold water" と言葉を足さなければいけない場合もあるでしょう。  
このように、日本語と英語の間を行き来する時は、それぞれの語が持つ意味の範囲をつきつめる努力をしてください。

Plain English 7

例題数多くの外来語が日本語に含まれ、私たちの日常生活の中で用いられている。
×There are a good many words of foreign origin incorporated into Japanese and used frequently in our daily lives.

例文を見てみましょう。

まず、"words of foreign origin" です。

この言葉がただ単に "foreign words" でしたら "incorporated into 〜" と一緒に使っても悪くありません。しかし、この "foreign origin" という言葉自体に「元」「出所」の意味が含まれていて、すでに「外来語」という意味を表現してしまっています。ですから、ここに "incorporated into〜" を入れると意味がダブってしまうのです。「すでに日本語に入って(含まれて)しまっている」ということで "origin" を使っているのですから、"incorporated into 〜" は不要です。

次に、日本文の「日常生活」が "daily lives" となっていますが、"used" 以下ももう少し簡潔に言うことができます。ここではあくまでも「言語生活」においてということですから、「日常生活で使用される日本語」という意味で "in everyday Japanese" としましょう。

英語感覚で見てみましょう。

"There be 〜" というと文体が弱くなるので、なるべく人を主語にして一般動詞を使いましょう。この場合では、 "we" を主語にして、動詞の "use" を使う表現ができます。

例題数多くの外来語が日本語に含まれ、私たちの日常生活の中で用いられている。
Plain EnglishWe use a good many words of foreign origin in everyday Japanese.

Plain English 8

例題彼は一語も聞き漏らすまいと耳をそばだてた。
×He listened attentively so as not to miss even a single word.

"so as to 〜" の構文を覚えさせるための典型的な例文です。英語感覚で考え直してみましょう。

英語の "listen" には "attention" という意味も含まれていますので、"attentively" という副詞は不要です。人に注意を促す場合や子供に説教する場合に使う "Listen." は "Pay attention." という意味なのです。

「耳をそばだてた」というのは「全身を耳にして聞いた」ということですので、英語では "all ears" を使うことができます。

また「一語も聞き漏らすまい」については、"hang on every word" という表現を使うと、一語一句に注意を傾けるという感じがよく表せます。

以上2つの点をふまえてこの日本語のアイディアを英語にすると、次のように言うことができます。

例題彼は一語も聞き漏らすまいと耳をそばだてた。
Plain EnglishHe was all ears, hanging on every word.

英語的表現を身につけよう


Plain English 9

例題あなたが日本の学校について批判すると、私はふさいだ気分になりますね。
×When you find fault with Japanese schools, I always feel blue.

例文を見てみましょう。

まず "find fault with〜 " から見てみましょう。

これは「何かに内在する欠点をみつける」という意味で、それ以上でもそれ以下でもありません。「悪い部分があるだろうと考えてそれを見つける」ということなので、悪い部分がなければ用いません。つまり日本語の「批判」とは少し違います。

よく英和辞典などで「"find fault with" = あらさがしをする」と載っていますが、これが誤訳の元です。日本語の「あらさがし」とは「あることないことぐちぐち言う」という感じですが、英語ではこのことを "find fault with〜" ではなく "pick on 〜" と表現します。

英語感覚で見てましょう。

まず、"feel blue" ですが、"blue" は確かに「ふさいだ気分」を表します。この場合は主語で "I" ですから、表現としての問題はありません。"sad" や "gloomy" の意味で用いて今の自分の感情を表す時には、"I am feeling blue" と言うこともあります。

しかし、「"find fault with" = あらさがしをする」式に「"feel blue" = ふさいだ気分になる」と、パターン化して覚えないようにしましょう。ご存じのように "blue" は「色」ですから、"you" や "he" が主語になれば、
You look blue.(ふさいだようにみえるね)  

のように視覚的な表現として、動詞は "look" を用います。

また、この英文のように "I always feel blue." と言うと、前半の部分との関連がうまく理解できません。「あることが私を落ち込ませる」なら "That makes me feel blue." としなければいけません。

日本語のアイディアを表現しましょう。

この場合の「ふさいだ気分」という日本語の意味を理解すると、"let down" という表現を使うことができます。「落ち込ませる」という感じです。

『Winnie-the-Pooh』(くまのプーさん)のビデオ "Wishing Bear" の中に、"I don't want to let down Christopher Robin." という台詞が出てきます。この言葉を効果的に使えば、「あなたの批判」に対して「私がどう反応するか」ということが言えますので、簡潔に表現することができます。

「批判」は文字通り "criticism" を使って、より自然な言い方にすると下のようになります。

例題あなたが日本の学校について批判すると、私はふさいだ気分になりますね。
Plain EnglishYour criticism of Japanese schools let me down.

Plain English 10

例題元気をだせよ。 そのうちに何とかなるさ。
×Cheer up. It will come out all right.

例文を見てみましょう。

ここで使っている "come out" は「結果」を表す言葉です。たとえば、写真をとってあげて「良くできてたらお送りします」などと言う場合には、次のように使えます。
If this photo comes out well, I'll send it to you.  

この例文の英語は「きちんと何らかの形で結果がでる」というニュアンスですので、日本文の「何とかなる」とはちょっと違います。

日本語のアイディアを表現しましょう。

一般的に「状況がよくなる」は "Things will get better." です。「これ以上悪くならない」「よくなるよ」「大丈夫だよ」などという時によく使います。

「元気出せよ」は "Cheer up." でも構いませんが、「気にすることないよ」ということであれば、"Take it easy." あるいは "Don't worry." も使えます。

例題元気をだせよ。 そのうちに何とかなるさ。
Plain EnglishCheer up. Things will get better.

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このページはケリー伊藤著「使える英語へ」(研究社出版、1995年)から抜粋したものです。

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