一般動詞を使う

英文を生き生きさせようと思ったら、できるだけ一般動詞、それも誰でも知っているような基本動詞を活用するようにしてください。"The verb gives life to any sentence." なのです。

日本の方が "presentation" をする時など、よく "be" 動詞を使って次のような言い方をします。

Today's topic is about the improvement of your English.

これでも意味はわかりますが、実際に話すのはあなたです。話す内容をもっと明確に伝えるためには、主語を自分にして動詞を活用してください。同じアイディアでも、動詞をうまく使うことによってもっと生き生きと相手に伝わります

Today, I would like to discuss how to improve your English.

主語は人が望ましい

学校でそう教わるのかもしれませんが、日本の人は無生物主語を用いた方が英語的であるというようにとらえていると感じることがあります。動名詞などが主語に来る "Doing something is ..." という文章などを目にするからでしょうか。

ここで勘違いを正しておきます。"Plain English"、つまり明解な英語を目指すなら、なるべく主語には "personal reference"、つまり人をもってきてください

これは上の基本動詞を生かすことにも関連しています。"Today's topic is 〜" とするよりは "I would like to discuss 〜" のほうが良いということです。

日本語と英語はもともと一対一の対応などしていないわけで、文の構造でも一致するわけがないのです。たとえ日本語が無生物主語(「今日の議題は...」)でも英語では人を主語(「私は〜」)にもってきてください。

Plain English17

例題私たちの住む日本の社会は、個性を重んじるよりも、むしろ他の人とうまくやってゆくことにより、より大きな価値をおく社会のようだ。
×In our modern Japanese society, getting along well with others seems to be more important than stressing one's own individuality.

例文をみてみましょう。

"stressing one's own individuality"(個性を重んじること)は「志向性」を示し、"getting along well with 〜"(他の人とうまくやってゆくこと)は「行為」を示しています。こういう違ったことを、対比として考えることはできません。

また、「日本社会は〜というものだ」というような普遍的なことをいう場合は、 "seems" のような表現を入れるとポイントがぼけてしまいます。自分の見解として述べるためには、はっきりと "I understand 〜" とか "I think 〜" と言いましょう

英語感覚で見てみましょう。

「他の人とうまくやってゆく」ということは「他の人に合わせる」と解釈して、対比させるために "individuality" に対して "conformity" を使います。

また "(Japanese)society" には、"our" という所有格はつきません。ですから、この場合は "In Japan" だけで十分です。

日本語のアイディアを表現しましょう。

この日本文は、どちらが先か、どちらに重点を置くか、という "priority"(優先順位)の問題です。このような場合には "come" を効果的に用いて表現できます。たとえば、  
Safety come first.(安全第一)  
Quality come first.(質が大事)  
Clarity come first.(明確さが一番大事)  

などです。

2つのものを比べる場合には "〜 come before ..." を使えば、次の例文のように簡潔に言いたいことが表現できます。  
His family comes before his job.(彼は家庭が仕事より大事です)

例題私たちの住む日本の社会は、個性を重んじるよりも、むしろ他の人とうまくやってゆくことにより、より大きな価値をおく社会のようだ。
Plain EnglishIn Japan, conformity comes before individuality.

Plain English18

例題君はそこでただ待っていればいい。
×There is nothing for you to do but wait there.

例文を見てみましょう。

この日本文は「待っているだけでいい」といっているのに対して、英文では 「待つ以外に何もできることがない」「待つことしかできない」という感じになってしまいます。

"nothing 〜 but ..." を使っているために、日本語のアイディアが違って伝わってしまいます。

英語感覚で見てみましょう。

"There be 〜" というと文体が弱くなるので、なるべく一般動詞を使いましょう。たとえば、「近所で火事があった」なら、  
There was a fire in my neighborhood.  

と言うより、  
A fire broke out in my neighborhood.  

と言った方がインパクトが強いのです。

"There be ..." は、実際に英語で話したり書いたりする場合は避けましょう。

日本語のアイディアを表現しましょう。

この日本語のアイディアである「〜するだけでいい」ということを少し強調する場合には、"All you have to do is ..." を使います(1)。

また、実際の会話などでもっと簡潔に言うとすれば(2)のようになります。 なお、(2)の文から "You" をはずして "Just wait there." とも言えますが、「私は〜する。 君はここで待て」というような場合は、"You" をつけるのが普通です。

例題君はそこでただ待っていればいい。
Plain English1All you have to do is wait there.
2 You just wait there.

Plain English19

例題新聞によると、ここ数年の内に大地震があるそうです。
×According to the newspaper, there will be a big earthquake in a few years.

英語感覚で見てみましょう。

"there will be 〜 " と言ってしまうと、それは本当に起こるだろうという「事実」になってしまいます。辞書で "will" を引いてみると、訳語は「...でしょう」などとなっていますが、そのあとの例文を見てみると "I will be sixteen years old this summer" のような「本当になる」という例文が載っています。

ここではあくまでも新聞の予測にすぎないわけですから、"according to 〜" ではなく "predict"(予測する)を使いましょう。

また英語で表現する場合には、「どこで」という場所を入れたほうがはっきりします。

例題新聞によると、ここ数年の内に関東地方で大地震があるそうです。
Plain EnglishThe newspaper predicts there will be a big earthquake in a few years in the Kanto area.

Plain English20

例題私は英語を勉強し始めてからもう6年になるが、英語の手紙も満足に書けない。
×It has been six years since I began to study English, but I can't still write a letter in English with ease.

例文を見てみましょう。"It has been 〜 years since ..." という構文を覚えるための例文の典型です。

"began to study" とすると、「勉強を始めた」という行為が強調されてしまいます。

「6年前に始めて、今はやっていない」ということではなく、「今も続けてやっている」という継続性を強調して言いたい場合は "I have been studying English for six years." とします。

英語感覚で見てみましょう。

「英語の手紙も満足に書けない」という部分に、「苦労する」という意味で"can't ... write ... with ease" という表現を使っていますが、 "with ease" は'bookish" な(堅苦しい)言い方なので "easily" を使います。

また、英語では「苦労する」という意味で "have a hard time" という表現をよく使います。たとえば、  
I am having a hard time with him.(彼には苦労したよ)  

などのようにです。

日本語のアイディアを表現しましょう。

"can't ... write a letter" と言うと、意地悪な人には「一文字(letter)も書けないのか」という意味に取られかねません。「手紙」という意味をはっきり出すためには、もう少し具体的に "write a business letter" というように言います。あるいは、総合的に "correspondence" を用いれば誤解されることはありません。

接続詞 "but" は、前後が完全に対比になっている場合に用います。"but" を用いるためには、 この文を見たり聞いたりする人に「6年勉強すれば英語の手紙は満足に書ける」という前提がなければなりません。

ですから、ここでは "but" ではなく、譲歩の意味合いや時間的な「まだ」のニュアンスも入っている "yet" を用いてください。

以上のことをふまえてより自然な英語にするとこうなります。

例題私は英語を勉強し始めてからもう6年になるが、英語の手紙も満足に書けない。
Plain EnglishI have been studying English for six years. Yet I have a hard time writing a business letter [correspondence] in English.

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このページはケリー伊藤著「使える英語へ」(研究社出版、1995年)から抜粋したものです。

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